君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「だから櫻田さんって嫌いだったのよ。...私が持ってないもの、欲しいものを兼ね揃えているんだもの。そのくせ小さいことで悩んじゃって。苛々してる私がバカらしくなっちゃったのよ。...まっ、全て過去の話だけどね」
パスタを全部食べ終わり、お上品に口元を拭く橘さん。
本当に嫌いになれない人。
「そうだわ。私、金曜から一週間、副社長とニューヨークへ出張なのよ」
「えぇーすごい!」
さすがは副社長の秘書様。
「それで、一応聞いてあげる。お土産、なにかリクエストある?」
「買ってきてくれるの?」
「まぁ...、友人だしね」
あっ、橘さんってばまた照れてる。
「えぇ~じゃあ、ブランドのー...」
「櫻田さんには自由の女神像で充分ね」
「ちょっと!」
ーーーーーーー
ーーー
「んー!」
長時間ずっとパソコンと向き合っていたためか、体が痛い。
時計を見ると、定時より二時間過ぎていた。
「ヤバ。だいぶ残業しちゃったな」
だけど今日中に終わらせたかったから、終わってよかった。
周りを見渡すと、人もまばら。
東野さんは...副社長室か。
最近、東野さん副社長に呼ばれることが多い気がする。
何かあったのかな?
「櫻田!仕事終わったか?」
「藤原係長!」
「これからさ、営業部の奴ら数人で飲みに行くんだけど、櫻田もどうだ?」
「えっ...。私も一緒にいいんですか?」
嘘...。
「だから誘ってんだろ?」
嬉しい!!
「いっ、行きます!行かせて下さい!」
「OK!みんな先に行ってるんだ。俺もあと少しで仕事終わるから、一緒に行こうぜ」
「はい!」
ーーーーーーー
ーーー
「は?夢みたいだって?なんで?」
「だってそうじゃないですか!異動初日の、私へのみんなの態度を思い出せば!」
居酒屋は会社の近くらしく、藤原係長と歩いて移動中。
「あー...。まぁ、な」
「今でも時々思い出すと、けっこうへこみますよ。お茶汲みするたび冷たくあしらわれて!...藤原係長を筆頭に、ですけど」
「あっ、まぁな。あの頃は俺も若かったから」
「若かったって、つい数ヵ月前の話なんですけど!」
昼間の仕返し!と思い、わざと意地悪く言う。
少しくらいいわよね。
あの頃の私、本当に苦労したんだから。