君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
お昼休みを知らせるチャイムが鳴り響くと、いつもはそんなの関係なしに仕事を続けているのに、今日ばかりはみんな、さっさと仕事を切り上げ、休憩に入る。


やっぱりみんなまだお酒が抜けてないのね。


そんな光景に、なんだか可笑しくて自然と口元が緩む。


さて、今日もお弁当作れなかったし。どこに行こうかしら。


そんなことを考えながら出掛ける準備をしていると、急に声を掛けられた。


「櫻田さん、薬ありがとうございました。朝よりだいぶ楽になりました!」


「そっか。良かった」


うん。小山君の顔色、朝より全然良くなってるわ。


「それでお礼と言ったらなんですが、一緒にお昼どうですか?勿論奢りますから!」


「なに?昼飯行くの?んじゃ俺も一緒に行く」


「藤原係長!」


急に背後から現れたかと思ったら、小山君の肩に手を回す。


「ちょっ!藤原係長!!苦しいっす!」


「アハハハ!」


アハハハって...。
でも、楽しそう。小山君ってみんなから好かれるタイプよね。


「どこ行くの?俺も行く」


「あっ、じゃあ俺も!」


会話を聞いてか、次々とみんな寄ってくる。


「いいじゃん。たまにはみんなで昼飯行こうぜ」


凄いなぁ。営業部の団結力っていうのかしら。

仲が良いっていうか...。


「櫻田!何をボーッとしてんだよ。置いていくぞ」


「あっ、はい!」


慌ててみんなの後を追い、楽しそうに話ながら歩く。
みんなの後ろを歩いていると、藤原係長がそっと話し掛けてきた。


「東野は今日も副社長と一緒なわけ?」


「はい。なんでも男二人で色々とあるからって副社長が...」



「ふ~ん。色々と、ねぇ。...。櫻田はさ、東野と仕事の話とかしないの?」


「少しはしますけど...」


そんな深い話はしていない、かなぁ。


「そっか。...あのさ、櫻田はどう思ってるか分からないけど、副社長。あの人は正直何を考えているのか分からない人だぜ」


「えっ?」


どういう意味?


「いつもにこにこしてて、優しそうな顔してるけど、けっこうなやり手だって噂だし。あの歳で副社長ってのもよく考えれば凄いことだろ?...亜希子も、時々副社長が怖いって言ってたしな」


「橘さんが、ですか?」


「あぁ。まっ!これはあくまで俺の見方なだけだけどね」


エレベーターを降り、エントランスを抜ける。

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