君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
しばしエレベーターをついつい見つめてしまっていると、ケータイが鳴り出す。


ディスプレイを見ると、小山君からだった。


「そうだった!急がないと」


電話に出ながら、慌てて会社を後にした。


ーーーーーーー

ーーー


「悪い、待たせたな」


「いいえ、お疲れ様です」


午後は東野さんと外回りなんだけど、なんだか久し振りな気がする。


「今日は5社回るから大変だけど、よろしくな」


「はい!」


そう。午後だけで5社回るというハードスケジュール。ここ最近、何かと用があって東野さんを呼び出す副社長のせいです!とは、誰一人言えないけど...。


「櫻田、これ」


信号が赤になり、車が停まると、なぜか東野さんは私に鍵を差し出した。


鍵...?


「あの、これは...?」


「家の鍵。俺のマンションの」


「えっ...」


家の鍵。俺のマンションのって...。


「えぇっ!?」


驚きのあまり、ドアに頭をぶつけてしまった。


「そんなに驚くことないだろ?」


「だっ、だって..!」


いきなり鍵だなんて...。


「なかなか時間取れないだろ?せめて週末くらいは一緒に過ごさないか?金曜の夜。俺は早く帰れないことが多いから。だからその時は菜々子が、家で待っててくれると嬉しいんだけど」


「東野さん...」


鍵を再度差し出され、そっと受けとる。


感激のあまり、受け取った鍵を握りしめる。

信号は青にかわり、車が動き出す。


「別に金曜だけじゃなくていい。好きな時に来てもいいよ。俺も早く仕事が終るときは連絡するから」


「いいんですか!?」

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