君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
過去に勝つには、どうしたらいいですか?
「ちょっとちょっと!今日のあれは一体どういうことなのよ!」


「それは是非とも俺も詳しく聞きたいんだけど」


「「で?」」


身を乗り出して聞いてくる二人。


「あっ、あの...。取り合えず離れてもらえませんか?」


月曜日の夜の居酒屋で、橘さんと藤原係長と三人。


「なんで櫻田さんはそんなに落ち着いていられるのよ!目の前で見たんでしょ?大貫さんが東野さんに抱きつくところを!」



「うん...」


話は、今日の朝に遡る。


ーーーーーーー

ーーーー

どこかで見たことがある女性。

そして東野さんの口から出た言葉に、私の頭の中は混乱状態だった。


「紹介するよ、こちらインテリアデザイナーの大貫奈津美さん。...で、大貫さん、こちらがー..」


「大丈夫です。知ってますから」


副社長が東野さんを紹介しようとしたが、大貫さんの声によって遮られた。


そして、1歩、また1歩とこちらへと近付いてくる大貫さん。


そんな彼女から私は目を離すことができなくて、東野さんが今、どんな表情かなんて分からなかった。



そして私達の前で立ち止まる。


「...久し振りね。覚えてくれているかな?」


「あっ、あぁ...」


明らかに動揺した声に、私の中で嫌な予感が膨れ上がる。


「やっぱり二人は知り合いだったんだね」


えっ...?
どういう意味?


「まぁ、挨拶はここらへんにしてさ、夜みんなで御飯でも食べに行こうか。色々と積もる話しもあるだろうしね」


「そうですね」


目の前の現実にうまく向き合えない。二人は知り合いだった...?


「あっ、ごめん!大貫さん、こちら東野君の秘書の櫻田さん」


突然副社長に紹介され、慌てて頭を下げた。


「はじめまして。櫻田菜々子といいます」


「はじめまして!これからよろしくお願いします」


そう言って差し出された手。


握手を求められたことを意外に思いながらも、そっと差し出された手に触れる。


「よろしくお願いします...」


「うんうん!じゃあ東野君、忙しい時間に悪かったね。また夜、よろしく頼むよ」


「はい、よろしくお願いします」


歩き出した副社長の後に続いて、大貫さんも歩き出す。


変な緊張感から開放された安心感に、溜め息を漏れた。


...その時


「...奈津美っ!」


大貫さんを呼ぶ声と同時に、私の横を吹き抜けていく風。

たった数秒間の出来事は、まるで映画のワンシーンのように、スローモーションにうつった。
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