君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
さっきよりも、より一層迫力を増した橘さんに、観念したかのように藤原係長は話し出した。
「...俺から聞いたって言うなよ?まぁ、櫻田は知ってるかもしれないけど...」
お酒を一口、口に含むと藤原係長はゆっくりと話し始めた。
「二人は、大学時代付き合ってた。...二人ともお互いを思い合っていて、正直絶対に結婚するんだろうなって思ってた。だけど...」
「だけど?」
「...振られたんだよ、東野が。俺もなんでかは分からないが、大学を卒業すると同時に、奈津美はいなくなった。俺には何の挨拶もなしに、な。だから詳しくは分からないけど、それからだよ。東野の女嫌いが始まったのは」
「そう...なの」
私はただ、二人の会話をそばで聞いているだけだった。
頭に入ってこない。
昼間の情事が、何度も頭の中で繰り返し再生されていて、胸が苦しかった。
目の前で大好きな人が、初めて本気で好きになった人を助けるあの場面が、私には苦しかった。
私の横を駆けて助けに行った東野さん。
そんな一瞬の出来事に気付けたってことは、ずっと大貫さんを見つめていたってことでしょ?
東野さんは今、どんな気持ちなんだろう。
「ねぇ、櫻田さん。あれから東野さんと話したの?」
橘さんの質問に、私は首を横に振った。
「あれから午前中は一緒に外回りだったんだけど、必要最低限な会話しかしてないわ。...元々仕事中は、ちゃんとプライベートと分けてたし。それにーー」
...とてもじゃないけど、聞けなかった。
怖くて聞けなかった..。
「なぁ、なんで櫻田は行かなかったんだ?」
「えっ?」
「誘われたんだろ?副社長に。...夜の会食に」
そうだった。
仕事終わってから副社長から内線がきて、良かったらって誘われた。
別にもう大貫さんはきっと、東野さんにとったら過去の人だし!
...今は私が恋人なんだし、堂々としていればいいじゃない!って言うかもしれないけど...。
「怖かったんです、私。目の前で二人にしか分からない話をされたり、笑い合ったりされるのが...」
あの写真の中の二人のように。
「それにあまりに突然すぎて、まだ東野さんからも何も聞いていなくて...頭がついていけなくて」
「櫻田...」
「過去の話だってことは、頭の中では分かっていてもまだ、心が追い付いていないんです」
「...俺から聞いたって言うなよ?まぁ、櫻田は知ってるかもしれないけど...」
お酒を一口、口に含むと藤原係長はゆっくりと話し始めた。
「二人は、大学時代付き合ってた。...二人ともお互いを思い合っていて、正直絶対に結婚するんだろうなって思ってた。だけど...」
「だけど?」
「...振られたんだよ、東野が。俺もなんでかは分からないが、大学を卒業すると同時に、奈津美はいなくなった。俺には何の挨拶もなしに、な。だから詳しくは分からないけど、それからだよ。東野の女嫌いが始まったのは」
「そう...なの」
私はただ、二人の会話をそばで聞いているだけだった。
頭に入ってこない。
昼間の情事が、何度も頭の中で繰り返し再生されていて、胸が苦しかった。
目の前で大好きな人が、初めて本気で好きになった人を助けるあの場面が、私には苦しかった。
私の横を駆けて助けに行った東野さん。
そんな一瞬の出来事に気付けたってことは、ずっと大貫さんを見つめていたってことでしょ?
東野さんは今、どんな気持ちなんだろう。
「ねぇ、櫻田さん。あれから東野さんと話したの?」
橘さんの質問に、私は首を横に振った。
「あれから午前中は一緒に外回りだったんだけど、必要最低限な会話しかしてないわ。...元々仕事中は、ちゃんとプライベートと分けてたし。それにーー」
...とてもじゃないけど、聞けなかった。
怖くて聞けなかった..。
「なぁ、なんで櫻田は行かなかったんだ?」
「えっ?」
「誘われたんだろ?副社長に。...夜の会食に」
そうだった。
仕事終わってから副社長から内線がきて、良かったらって誘われた。
別にもう大貫さんはきっと、東野さんにとったら過去の人だし!
...今は私が恋人なんだし、堂々としていればいいじゃない!って言うかもしれないけど...。
「怖かったんです、私。目の前で二人にしか分からない話をされたり、笑い合ったりされるのが...」
あの写真の中の二人のように。
「それにあまりに突然すぎて、まだ東野さんからも何も聞いていなくて...頭がついていけなくて」
「櫻田...」
「過去の話だってことは、頭の中では分かっていてもまだ、心が追い付いていないんです」