君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
仕事は仕事。

プライベートを持ち込むわけにはいかない。
それにー...東野さんに振られたわけでも、嫌われたわけでもなくて。私がただ勝手に知ってしまっただけ。

私が知らないことにしておけば、今のままでいられるよね?
藤原係長も言ってたし、東野さんはただ、私に心配かけたくない、不安にさせたくないだけ、なんだよね...?


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「よし、じゃあ行くか!」


「お願いします」


エンジンをかけ、翔ちゃんは車を発進させる。


「だけど珍しいね、桜子は乗っていかないなんて」


「あー...。そう言われてみれば、確かにそうだな」


そう。あのあと翔ちゃんが「ついでに乗っていくか?」って桜子に聞いたけど、電車で行くからいいって言うんだよね

いつもの桜子だったら喜んで乗っていくと思ったんだけどな。


「菜々子、朝の車の中で話すのもなんだけど、ちょっといいか?」


「うん...なに?」


思わず翔ちゃんを見つめてしまう。



「俺さ、来年の春から一人暮らしを始めようかと思ってるんだ。...まだ先の話だけど、早めに言っておこうと思って」


一人暮らし...。


「そっか」


「桜子には昨日話したんだ。この間、三人で話しただろ?だったら早い方がいいと思ってさ。桜子も俺に合わせて一人暮らしするって言ってたから、菜々子もそのつもりでいてもらえるか?」


そっか。なんとなく分かっちゃった。桜子が今、この車に乗っていない理由が。


「うん、分かったよ。さすがに二人が出て行ったら、今の家賃一人では払えないし、私も部屋を探す」


「うん...」


あと数ヵ月か。三人で一緒に暮らせるのは。

いくら決めたことだと言っても、やっぱり寂しい。


「それともう1ついいか?」


「えっ?」


なに?


「菜々子さ、昨日何かあった?」



翔ちゃんの言葉に思わずドキッとしてしまった。


「気づいてないかもしれないけど、菜々子はさ、昔から辛いことがあると、必死にいつも通りに振る舞う癖があるって知ってた?」


「翔ちゃん...」
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