君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
カチャカチャと食器の音が響く。

東野さんは慣れた手つきで食器を洗っていく。


「...不思議な感じがするな。菜々子とこうやってキッチンに立つのは」


「はい」


不思議だけど、でも私は嬉しい、

ちょっと新婚さんな気分で。


「...家でもあいつと、こうやってるのか?」


「えっ?」


思わず手が止まる。


「...わりぃ。嫉妬」


えっ、えぇっ!?なっ、何?急に東野さんってば!


いきなりの話の展開に頭がついていかない。


「...今日も嫉妬した。奈津美から話を聞いて」


「東野さん...」


どうしよう。凄く嬉しい。


「カッコ悪いな。いい歳して嫉妬とか。ガキみたいで」


そう言いながら笑う東野さんは、なぜか悲しそうに見えた。

私、そんなこと思ってないのに...。


「東野さん、私、前にも言いましたよね。どんな東野さんも大好きですって」


「えっ?」


「それに私は今、すっごく嬉しいです。東野さんにその、嫉妬をしてもらえて...」


それって私のことを想ってくれているってことでしょ?


「私だって、大人げないですよ?...やきもち焼きますし」


「菜々子...」


自分で言っておきながら恥ずかしいわ。

27にもなってこんな高校生みたいな話をしちゃって。


誤魔化すようにまた食器を拭き始めた時、急に東野さんに抱き締められた。


突然のことに思わず食器を落としてしまったが、運よく割れず音を立てて転がる。


「あっ、あの...!東野さん?」


ふいに抱き締められて、自分でも心臓がどきどきと、いっているのが分かる。


そんな私の耳元で東野さんはそっと囁いた。


「...寝室連れてく」

< 326 / 411 >

この作品をシェア

pagetop