君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「えっ!?」
慌てる私を余所に、東野さんは水道を止め、手を拭くと私が手にしている布巾を取り、そのまま私の腕を引く。
何も言わず東野さんは寝室へと行く。
暗い寝室。
電気はつけず、ドアが閉まると同時に東野さんに抱き締められる。
「とっ、東野さん?」
そっと私を離すと、すぐに感じる唇に温かな感触。
「東野さっ...」
離れたと思ったら、また塞がれて言葉が出ない。
次第に深くなっていくキスに息苦しさを覚える。
「菜々子...」
何度も私を呼ぶ声に愛しさが込み上げてくる。
ベッドに横たわると私はそのまま東野さんの首に腕を回した。
好きで、大好きで、どうしようもなくって...。
東野さんに抱かれると、気持ちが込み上げてきて、いつも涙が出そうになる。幸せな気持ちで一杯になるのに、なぜか不安な気持ちも同時に襲ってくる。
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目を覚ますと、目の前には東野さん。
器用に私の髪の毛を指にくるくると巻いていた。
「ごめん、起こした」
そんな東野さんが、なんだか可愛く見えてしまい、笑いを堪えながら首を横に振る。
「俺...恋愛に関しては新入社員並みだな」
「えっ?..どうしたんですか?急に」
「んー...」
そのまま私の身体を抱き寄せる。
「菜々子といると、どうしたらいいのか分からなくなることばかりだよ。...嫉妬したりな」
「東野さん...」
「だけど、こうやって菜々子と一緒にいると安心する。...不思議だな」
そう言うと、私を抱き締める力が強まる。
あっ...そういえば。
「東野さん、私、今の家を春には出ることになりました」
「えっ...?」
「ルームメイトと話し合って、みんな別々に暮らすことになりました。...今から部屋を探さなくちゃなんですけどね」
「そっか...」
少しは安心してもらえたかな?
「ごめん、菜々子は寂しいかもしれないけど、俺は嬉しい」
「東野さん...」
「圭吾」
「えっ...」
「仕事中はいいけど、二人の時は名前でって言っただろ?そろそろ呼んで欲しいんだけど」
そのまま私を離し、見つめてくる。
「けっ、圭吾さん...」
見つめられたまま、名前を呼ぶと圭吾さんは笑ってくれて、私まで嬉しい気持ちになる。
「...俺も菜々子に話さなくちゃいけないことがあるんだ」
「話、ですか?」
「あぁ」
また私を抱き寄せると、圭吾さんは
ゆっくり話し始めた。