君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「いや、最近まで気付かなかったよ。...菜々子を見るようになってからだよ。気付いたのは」


「えっ?」


それって...。


「とにかく、俺は別に苦に思ってないから。好きでやってることだから、これからも気にしないこと」


「はっ、はい!」


「それよりコーヒーは?冷めたら美味しくないぞ」


腕は解かれ、東野さんはまた新聞を読み始めた。


「いただきます」


東野さんが淹れてくれたコーヒー。


ちょっと特別感があるコーヒーに、どきどきしながら一口飲む。


「美味しい!」


お世辞じゃなく本当に美味しいコーヒーに驚いてしまった。まるでお店で出されているようなコーヒー。

私もよく自分で淹れるけど、全然違う。


「美味しいか?」


「はい!すっごく!!」


「それはよかった。藤原も菜々子みたいに美味いって言いながら飲んでるよ」


「藤原係長が?」


「あぁ。けっこう頻繁に家に来るんだ」


へっ、へぇ~。それはちょっと、なんだか妬けちゃうわ。


「...そうだ」


そう言うとなぜか急に立ち上がり、机に置かれていた何かをを手にこちらに来る。
不思議に思いながらも、そんな東野さんを見つめていると、私に差し出された白い封筒。
「これ、菜々子にもらってほしいんだ」


「...これは?」


そっと差し出された封筒を受け取る。

宛名が書いていない封筒。


「昨日、菜々子が言ってただろ?奈津美と写ってる写真があったって。.「「探したら本当にあって驚いた」


それじゃもしかしてこの中身って...。


開けて取り出してみると、やっぱり東野さんと大貫さんが笑顔で写っている写真だった。


「まさか一枚だけ残ってるとは思っていなかったからさ。...最後の一枚は、菜々子が処分してくれる?」


「でも、そんなっ...!」


確かにこの写真を見た時はショックだった。

ショックだったけど、これは東野さんの思い出でしょ?
嫌な気持ちの方が大きいかもしれないけど、きっと楽しいことや幸せな気持ちもあったはず。なのに捨てるなんて...。

だけど、そんなこと私の口からは言えないわ。


「もう俺には必要ない過去だから。今は違うから。...だから菜々子に棄ててもらいたい」


「東野さん...」
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