君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
スケジュールを確認すると、今日も昨日と同じく、大貫さんの名前があった。



「聞いたわよ。櫻田さん抜きで二人で行動しているようじゃない?噂好きな女子社員達の格好のネタよ?なんたって女嫌いな東野さんが、櫻田さんに続いて大貫さんと一緒に行動を共にしているんだから。...女嫌いは治ったんじゃないかって噂もあるわよ」


「うそっ!!」


思わずスケジュール帳に書き写す手が止まる。


「本当よ。そのうちアタックする人達が出てくるんじゃないかしら。なんたって顔よし!な仕事できる男ですからね。呑気に藤原さんと仲良く仕事したりしてる場合じゃないわよ!!」


ん?なんか語尾、ものすごく強調されなかった?


「やだ、ひょっとして橘さんってばやきもち?」


「べっ、別にっ!」


今度は橘さんの手が止まる。


「それはごめんなさいね。藤原係長と一緒に仕事をしちゃって」


「だから別に何とも思ってないって言ってるでしょ?...いい!?変なことを藤原さんに吹き込まないでよ」


やだ。橘さんってば可愛い。そんな態度とられちゃったら、止まらなくなるじゃない


「えぇ?変なことって?」


つい意地悪く聞いてしまう。


...けどさすがは橘さんなわけで。
「あ~ら、このお口かしら?いつも私に助けてもらってるくせに、意地悪を言うお口は!!」


「いっ、いひゃい~!こめんなしゃい!」


職場だと言うのに、橘さんってば私の両頬を引っ張ってきた。


「全く!子供なんだから」


「どっちがよ!!みんな笑ってるじゃない!」


既に何人も出勤しており、当然私達の行動はみんなに丸見え。みんな押し殺すようにくすくすと笑っていた。


「やだ、櫻田さんのせいで恥をかいたじゃない。最悪だわ。お先に」


「それはこっちのセリフよ!」


言い返しても答えることなく、橘さんは秘書課から出て行った。


もう!橘さんってば!!


「本当に櫻田さんと橘さんって仲良しですね」


「えっ?」


橘さんが行った後、秘書課の後輩二人が声を掛けてきた。


「同期で二人ともキレイで、副社長と東野部長の秘書!私達の憧れです」


「あっ、ありがとう...」


『憧れ』なんて言われたら、照れちゃうじゃない。


ふと時計を見ると、けっこうなお時間になっていた。


「ヤバッ!ごめんなさい、また後でね」


急いで残りを書き写し、秘書課を出る。


「頑張って下さいね!」


後輩達の声に見送られて。


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