君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
そのままベッドに横になり、ボーッと天井を見つめる。


「...この部屋で、こうやってゆっくり過ごせるのも、本当にあと少しなんだよね」


ベッドから起き上がり、机の引き出しの中にあるアルバムに手が伸びる。


そこには三人で過ごした思い出の写真が沢山入っていた。


「...懐かしいな」


よく考えると凄いことよね。小さな頃からずっと一緒で、大人になっても一緒に暮らしているんだから。


勿論楽しいことばかりではなくて、喧嘩もしたし、何日間も口をきかないこともあったけど、それも全部含めて私には、素敵な思い出なんだけどな...。


ふと鞄に入れたままの白い封筒を取り出す。



「これ...本当に棄てていいのかな」


私、矛盾してるかもしれないけど、過去を棄てるようなこと、東野さんにして欲しくないのかもしれない。

...な~んてこと、東野さんには言えないけど。でも私にはどうしても見えちゃう。


東野さんはまだ、本当に大貫さんのことを『過去』に出来ていないんじゃないかって。頭の中でだけ進んでて、心は追い付いてないっていうか...。


私の思い違いかもしれないけどね。


そんなことを考えていると、ついつい溜め息が漏れる。


東野さんはもう過去のことだ。写真も棄ててくれって言ってるんだからそれでいい。

それでいいはずなのにー...。
まだモヤモヤが取れないのはなんでだろう。
そんなことを考えながら東野さんと大貫さんの写真を見つめていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。


「はーい!」


「菜々子、ちょっといいか?」


翔ちゃん?どうしたんだろう。

写真をしまい、ドアへと向かう。


「どうしたの?」


「ちょっといい?」


「うん、どうぞ」


部屋へと招き入れると、翔ちゃんはテーブルに雑誌を並べてきた。


「これ、賃貸情報」


翔ちゃんの隣に座り、情報誌を手に取る。


「場所によっては早い方がいいと思ってな」


「...こうやって見ると、住む場所は沢山あるんだね」


パラパラと捲っていると、沢山の賃貸情報が載せられていた。




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