君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
あれだけ俺が支えてやる、一緒にいようって言ったのに、奈津美は突然いなくなった。


どれだけ忘れようと思っても、なかなか忘れられず。だけど、今やっと奈津美を過去に出来たっていうのに...。


「何で、今なんだよ」


仕事が終わり帰宅し、珍しく飲みたくなった俺は缶ビール片手に寒い空の下、ベランダで一人飲んでいた。


さっき送ったメールへの返信を待ちながら。


「...もう寝ちまったか?」


本当に女々しいと思う。昨日の夜、あれだけ菜々子を抱いて今まで言えなかった過去をさらけだして...。

それでも俺を好きだと言ってくれる菜々子に、また頼ろうとしているんだから。


堪らなく菜々子の声が聞きたくなった。


奈津美と再会してから、今まで以上に菜々子を欲して仕方ない。

理由は...分かっていた。


「情けねぇ...」


こんな俺を好きになってくれた。欲しい言葉と優しさをくれた。

俺のために色々頑張ってくれた。そんな菜々子を可愛いと思うし、これからもずっと大切にしたいって思う。だけど、つい気になってしまう。彼女の存在が。


「なんで今更また俺の前に現れた...?」


先にいなくなったのは奈津美だろ?なのに、まるで俺達は付き合っていなかったかのように、普通に接してきて...。
一緒に仕事がしたいって言い出した。昔みたいに無邪気な笑顔で俺を『圭吾』と呼ぶ。


また前みたいに友達として付き合おうって言いたいのか?それともー...。


「くそっ!」


一気にビールを飲み込む。


考えれば考えるほど分からなくなる。なんで今なんだ。

もうこれ以上苦しめないで欲しい...。


ーーーーーーー

ーーーーー

「...今日まで、ですか?」


「うん。大貫さんも売れっ子デザイナーだしね。明日には向こうに戻らなくちゃいけないみたいだよ」


「そうですか...」


なんだ、この感じ。安心したような悲しいようなこの感情は...。

良かったじゃないか。明日にはいなくなるんだから。


前みたいに菜々子が秘書として、一緒に仕事が出来る。菜々子のことだけを考えられるんだから。


「色々大変だったでしょ?」


「えっ...?」


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