君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
最後の日も奈津美は何か言ってくることもなく、移動中の車内では他愛ない話をしてくるだけだった。


再会した時は、どんな風に奈津美と接したらいいのか分からなくて、戸惑ったりもしたけれど、驚くほど自然に接してくる奈津美に合わせて、俺も普通に接していた。


これでいいのか悪いのか分からないし、本当は奈津美に聞きたいこと、言いたいことは沢山ある。だけど奈津美がそんな風に接してくるなら俺もそうするしかないだろ?


それに今の俺にとってはもう過去。俺には菜々子がいる。もう関係ないことだ。


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「お疲れ様でした!」


「お疲れ様」


地下駐車場に車を停めて降りる。


「三日間、本当に勉強になったよ。どうもありがとうね」


「いや、...俺も勉強になった部分が沢山あった。良かったよ、一緒に仕事できて」


「圭吾...」


二人で並んで歩いていたというのに、いつの間にか奈津美の足は止まっていた。


「どうした?」


振り返り見る。


「ねぇ、圭吾!お礼にコーヒー奢ってあげる!」


コーヒー?


「別にいいよ。それにまだ戻ってやらなくちゃいけない仕事があるんだ」


もうこれ以上は関わりたくない。


先に歩き出すが、奈津美はそんな俺を追い越して、いきなり俺の腕を掴み走り出した。


「おいっ!」


「たまには息抜きも必要だよ!そんなに仕事ばっかりしてたら、圭吾将来ハゲちゃうよ」


ハゲって...。何言ってんだよ。

連れてこられたのは一階にある休憩室だった。


「はい、コーヒー!」


「...サンキュ」


まぁ、会社の休憩室ならいいか。飲んだらすぐ戻ればいいし。


定時を一時間以上過ぎた社内は静まり返っていて、俺と奈津美が出す音だけが響き渡っていた。


残業ゼロを目指すうちの会社では珍しくない光景。


「圭吾...今日で最後だね」


「あっ、あぁ。...そうだな」


三日間一緒にいて、最後という言葉を初めて聞いたからか、一瞬驚いてしまった。


「ねぇ、私が突然目の前に現れてビックリした?」
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