君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「...だけど、圭吾と離れるのが辛くて...結局最後まで言えなかった」


「...んだよ、それ」


そんな勝手に自分で決めて勝手に行ったって言うのかよ。


「ふざけるなよ!じゃあ奈津美はデザイン会社の内定貰えたって俺に嘘ついて、勝手に決めて勝手にいなくなったって言うのかよ!」


「だって仕方なかったじゃない!」


「なにがだよ!...俺、奈津美がどれだけ頑張っていたか知ってたよ。頑張っても認めてもらえず、女のくせに、そんな言葉を言われながらも頑張ってた奈津美を知っていたよ」


女だからって理由で壁ができても、負けずに頑張る奈津美が好きだった。


「そんな奈津美を支えてやりたいってずっと思ってた。...思ってたのに、何で言わなかったんだよ。卑怯だろ?自己完結して勝手にいなくなるなんて...」


「圭吾...」


俺がどんな思いで毎日を過ごしてきたと思う?


「忘れたいのに忘れられなくて、女嫌いになって...。この10年間、俺がどんな思いで過ごしてきたか、奈津美に分かるか?」


今更なんだよ。全てが。


「私だって...。私だってこの10年、ずっとずっと圭吾のことだけを考えていたんだよ?」


涙を流したまま、奈津美は一歩、また一歩と歩み寄ってくる。
「なのに、10年ぶりにあった圭吾は
変わってた。...剛から聞いたよ。櫻田さんと付き合ってるんでしょ?」


「...あぁ」

なぜか奈津美から視線を反らしてしまった。


「ショックだった。 圭吾も変わらず私と同じ気持ちでいてくれてるって思ってたから...。だから今まで頑張ってこられたから」


俺の近くまできた奈津美は、ぎゅっと俺の腕のワイシャツを握り締めた。


「...分かってるよ?私が悪いって。剛にも言われた。圭吾は苦しんでたって。そんな圭吾が変われたのは櫻田さんのおかげだって。...悲しかったけど、あの時の私の判断は間違っていて、結果、圭吾を凄く苦しめてしまったんだなって...だから、最後の日くらい櫻田さんにも圭吾にも、笑顔でさよならしようって思ったの。...必死だったんだからね?赤い目を隠すのに、何度もトイレに行って化粧直して」



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