君が好き。～完璧で女嫌いなカレとの恋～
自分の幸せと、好きな人の幸せ
「そう思っていたけど、やっぱり無理だよ...。好きだよ、圭吾ぉー...」


この言葉を聞いた瞬間、私の足は動き出していた。


あれだけ二人の話を聞いてて、動きたくても動けずにいたのにー...。


あの言葉を聞いた瞬間、私の頭の中で何かが壊れる音がした。
気付いたら夢中で走っていて。外はいつの間にか雨が強まっていて。
傘持ってるくせに、さすことさえしなくて。
...今日ばかりは、雨に感謝した。


みっともなく泣いている姿に気付く人は少ないから。...いい歳した女が、子供みたいに泣いてるんだから。


「バカみたい...」


私が二人の邪魔してるだけじゃない。二人ともお互いのこと、ずっと好きだったのにー...。
私がいるから...。


涙は止まることなく流れる。足は次第に疲れ、ゆっくりと歩いては止まっていく。


そして疲れきった身体は、まるで電池の切れた人形のように地面に落ちていく。


東野さんはあんな風に言ってくれたけど、声だけで分かる。

気持ちを押さえ込んでいるって。


それでも私、嬉しかった。東野さんが私のこと大切な人って言ってくれて...。


そんな矛盾が頭の中で駆け巡り、涙が止まらない。


こんなに東野さんが好きで、東野さんも私のことを大切な人だって言ってくれた。大貫さんより私を選んでくれたのに...。こんなに 悲しい気持ちで一杯なのはなぜ？


いつの間にか人通りは少なくなり、さらに強まる雨。空を見上げると真っ黒な空で星ひとつ見つからない。


雨で誤魔化すように涙を洗い流したい。いっそのこと、東野さんを嫌いになれたらいいのにー...。

嫌いになって、私から振って。
『東野さんには大貫さんがいるでしょ？』
って言ってあげられればいいのにー...。


そんなの、今の私には無理だよ。


「...菜々子？」

雨の中、私の名前を呼ぶ声。


声のした方へと視線を向ける。


「やっぱり菜々子だ！何やってんだよ！この雨の中！！」


そう言って駆け寄ってきてくれたのは...


「翔...ちゃん？」





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