君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
そんな私とは対照的に笑顔で私を見つめる大貫さん。


「...こうやってちゃんと初めて櫻田さんを見たけど、本当に綺麗ですね」


「えっ...」


なっ、何を急に!?


「私より5歳も下なのになぁ、なんかズルイ!」


そう言って無邪気に笑う大貫さん。そんな大貫さに、なんだか気が抜けてしまう。



「櫻田さん...こんなこと、私が言えた義理じゃないけど、圭吾のこと幸せにしてあげて下さい」


人混みの中だと言うのに、大貫さんは深々と頭を下げてきた。


「おっ、大貫さんっ!?」


頭を下げたまま、言葉を続ける。


「私...色々あって昔、圭吾を傷つけてしまったんです。...沢山傷つけてしまって。だから、何があっても圭吾には幸せになって欲しいんです!!」


「大貫さん...」


なんて...なんて素敵な人なんだろう。


「圭吾...櫻田さんのこと、大切な人だって言ってました。櫻田さんもそうでしょ?」


そして純粋な人。

...そして、東野さんのこと、本当に好きなんだ。


だけど、東野さんを思う気持ちだけは私も負けたくない。



「はい...。この会社に入って、東野さんと出会って。ずっとずっと好きでした。この気持ちだけは変わりません。」


大貫さんを見つめたまま伝えると、一瞬驚いた表情を浮かべたが、またすぐあの無邪気な笑顔を見せる。


「良かった。圭吾が好きになったのが櫻田さんで!...これで安心して向こうに戻って仕事に打ち込めます」


また大きく私に一礼する。


「時間取らせてしまってすみませんでした。...お仕事頑張って下さいね」


「大貫さんも...」



また大貫さんはあの無邪気な笑顔を見せてくれて、『失礼します』と挨拶すると、大きなスーツケースを引きながら改札口へと向かって行った。


大貫さんの背中は、ピンと背筋が伸びていて凛としてて。
さっきのことといい、憧れずにはいられなかった。なんて素敵な人なんだろうって...。

東野さんが好きになったのが分かったわ。私が男だったら、絶対好きになっていたもの。
それにしても、まさかあんな言葉を言われるなんて思わなかった。





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