君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
きっと演技とかじゃなくて、さっきの言葉たちは全部本物。
だけど、普通言える?ずっと好きだった人の今の彼女に、あんな言葉を素直にー...。

好きな人の幸せをただ祈って、確認して。その相手の私に笑顔でさよならして...。


私には絶対出来ないこと。

どうしよう。これから仕事なのに、堪らなく泣きたくなってきた。


空を見上げ涙をぐっと堪える。


...よし!仕事に行かないと!


私は私。大貫さんは大貫さん...。
そう自分に言い聞かせないと、気持ちに負けそうになる。
もう決めたんだから。ちゃんと考えようって。向き合おうって。泣いてなんていられない。
...いられないんだからー...。


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「櫻田、悪いが至急30部ずつコピー頼む」


「はい」


あの日から3日が過ぎた。東野さんは相変わらず忙しくて、たまに移動中に車内で話をするだけ。以前と全然変わらなくて、いつものように東野さんは優しい。
二人っきりのときは、『菜々子』って呼んでくれて、『疲れた』とか弱音を吐いてくれる。
もう、このままでもいいよね?
東野さんと幸せになってもいいよね?
大貫さんも、それを望んで。だから私にあんな風に言ってくれたのよね。
これが私の出した答えでもいいかな?


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「櫻田~!一生のお願いがある!」


「なっ、何ですか?」


私の席に来たかと思えば、藤原係長は急にお願いポーズをしてきた。


「どうしても午前中のうちにミーナに持って行かなくちゃいけない書類があるんだ!だけど、俺今から商談があって、それに手が空いてる奴誰もいなくて...この通り!」


あの藤原係長がこんなに頭を下げているのだから、本当に困ってるんだろうな。


「私は全然構いませんけど、東野さんに聞いてみないと...」


至急の仕事があるかもしれないし。


「それなら大丈夫!さっき了解取ったから!櫻田が行ってくれるならいいって。いや~助かる!あとでちゃんとお礼するから」






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