君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「数日以内に辞令が出る。引き継ぎして、年明けには向こうに行く」
「そんなに早くですか?」
あと1ヶ月くらいじゃない。
「急な話だ。菜々子はよく考えて欲しい。...どちらを選んでも、俺は菜々子の答えを受け入れるから」
私の答え...?
そんなの、急に言われたって分からないわ。東野さんみたいにすぐに答えなんて、出せない。
「...今日は帰るか?ゆっくり考えたいだろ?」
「はい...」
「送るよ」
そう言って立ち上がった東野さんを慌てて止める。
「大丈夫です!そんなに遅くないですし、...それに今は一人で帰りたい気分です」
「...そうか。分かった」
一瞬、悲しそうな表情を見せた東野さん。
「...菜々子、これだけは分かって。俺にとって菜々子はこの先もずっと大切な存在。この気持ちだけは変わらないから」
立ったまま、じっと見つめられ、その瞳に縛りつけられているかのように動けずにいた。
東野さんの言葉に嘘はないと思う。信じたい...。
だけど、ニューヨークに行って大貫さんと一緒に仕事をするようになったら?
それでも東野さんは、同じ言葉を私に言ってくれる?
ダメだ。
「...帰ります」
逃げるように東野さんの家を飛び出した。
私、嫌な女になっていく。素直に信じることが出来ない。
外に出ると、どしゃ降りの雨。
「アハハ...。天気ってば私の気持ち、分かってくれたのかな?」
泣きたい気分だって。
思いっきり泣きたい気分だって。
とぼとぼと雨の中、歩き出す。
「東野さんのバカ...」
私が出した答えを受け入れるからって...。