君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「うん」
あれから、翔ちゃんに全てを話した。
「菜々子も行くのか?」
「分からない...」
いくら悩んでも出ない答えだもの。
それ以上、私も翔ちゃんも言葉を交わすことなく、部屋中に響くのは外の激しい雨の音と、時計の秒針が進む音。
「...行くなよ」
そんな音にかき消されそうな、小さな声。
「えっ...」
「行くな」
今度はしっかり聞き取れる大きな声。そして力強い瞳で見つめられる。
「翔ちゃん...?」
また私を元気付けようとする冗談?
だけど翔ちゃんの表情はいつまでたっても変わらない。
「菜々子が幸せならそれでいいって思ってた。...近くで、奈々子の幸せを見届けていれば、自然と気持ちは消えていくだろうって。そうすれば、ずっと幼馴染みでいられるって」
ちょっと待って。これじゃまるでー...。
「だけど、もう限界。...遠くに行ったら見守ることも、助けてやることも出来ない」
「翔ちゃ...」
翔ちゃんの手が、私の手にそっと触れる。
それだけで、私の心臓は大きく脈打つ。
「だったら俺が奈々子を幸せにする。...こんな弱ってる時に言うなんて、フェアじゃないけどな。だけど、なにも言えずに遠くに行かれるよりマシだ。...菜々子が好きだ」
「......っ」
本当、フェアじゃないよ翔ちゃん。
「本当だよ...。こんな弱りきってる時にそんなこと言われたら、甘えたくなっちゃうじゃない」
どれだけ楽だろうか。翔ちゃんを好きになれたら。
いつも私が辛い時、そばにいてくれて励ましてくれて...。
昔からの私を知ってるから、自然でいられる。
きっといつも一緒に笑っていられる。
「いいよ、甘えても。今はまだそれだけでもいいよ」
そのまま翔ちゃんに腕を引かれ、抱き寄せられる。
「俺には...俺にだけはいつでも甘えていいよ」
翔ちゃん...。
優しくて甘い言葉にまた涙が出る。
最近、沢山泣いているのに、まだ涙って出るものなんだね。