君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「そんなことより!どうするのよ。昨日言われたんでしょ?ニューヨークに行くの?」


橘さんの言葉に、身体の力が抜ける。


「...だから直球すぎるってば」


「なによ、休憩時間は少ないのよ。だから要点を絞って聞いてるんじゃないの。...どうなのよ」


「...分からないわよ、まだ。昨日の今日で。...逆に聞くけど、橘さんが私の立場だったらどうする?」


好きな人がニューヨークに行ってしまう現状になったら。


「私だったら?そりゃ決まってるじゃない。行くに決まってるわ」


「えっ...悩まないの?」


即答できるの?


「当たり前じゃない!しかも向こうでは元カノと一緒に仕事をする機会が多いんでしょ?だったら尚更よ。私もニューヨーク支社に行くわ」


「...そっか」


凄いな、橘さんは。


「私はダメだね。弱気なことばかり。...向こうに行っても、会話は大丈夫かなとか、私が向こうで仕事をする意味があるのかなとか、色々考えちゃってた」


「会話なんて慣れよ。現地に行けば嫌でも語学なんて身に付くわ。...それに向こうに行く意味ならあるじゃない」


「えっ?」


「好きな人と一緒にいるためよ!立派な理由じゃないの」


橘さん...。


「まだ付き合って一年も経ってないじゃない。そんな時に離れるなんて、あり得ないでしょ。一緒に行くべきだわ」


そう言って運ばれてきたパスタを、器用に巻いて食べる橘さん。


「...橘さんは、私がニューヨークに行っちゃったら寂しい?」


「はぁ?」


私の言葉がよっぽど意外だったのか、持っていたスプーンを落としてしまった。


「大丈夫!?」


慌てて拾い、差し出すが、いまだにポカーンとしている橘さん。


「...橘さん?」


「あっ、あなたが変なこと言うからでしょ!?」


「へっ、へん!?」


「そうよ!気持ち悪いわ!」


「なっ!気持ち悪いって...!」


「早く食べてしまったら?休憩時間終わっちゃうわよ」


「あっ...!」


時計を見ると、確かに早く食べて出ないと間に合わない時間。慌てて食べ始めた。


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ーーーー


「ありがとうございましたー」


可愛らしい店員さんに見送られ、お店を後にする。


正直、味をよく覚えてないわ。








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