君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~

自然と東野さんと目が合って、そっと微笑んでくれた。


やばい。

慌てて、貰った紙で顔を隠す。


反則ですよ。職場で一瞬と言えど、あんな笑顔だなんて...。


「本当に...」


ーーーーーー

ーーーー


「美味しい」


「良かった」


休憩時間、東野さんが連れてきてくれたのは、会社近くの小さな定食屋さんだった。


「会社の近くにこんなに美味しい所があったんですね。知りませんでした。...でも、大丈夫ですか?こんな会社の近くで」



誰かに見られたりしたら...。


つい周りを見回してしまう。


「大丈夫だろ。上司と部下が一緒に食べてるだけなんだし。逆にわざわざ遠い所に行く方が不自然だろ?」


「...確かにそうですね」


「で?俺に何か話があったんだろ?」


「えっ..」


思わず箸が止まる。


「朝、そんな顔してた」


「東野さん...」


嬉しい。そんな小さなことに気づいてくれていたなんて。


「で?どうしたんだ?」


優しい口調で私に話し掛ける東野さん。まるで私が何を言いたいか分かっているかのようにー...。


「...私はずっと東野さんと一緒に仕事をすることを目標に頑張ってきました。それが叶った今も、この気持ちは変わりません。これからも、東野さんと一緒に仕事をして、東野さんの仕事のサポートをしたいと思ってます」


「うん...」


「だけど私、どうしてもニューヨークに行く意味があるとは思えないんです。環境が全く違うし、言葉も通じないし。...そんな場所で私がやるべきことは、ないと思うんです」


それに最初はよくても絶対私、東野さんのお荷物になってしまうと思う。



「だから私は、ニューヨークには行きません。...今朝、上司にもそう伝えて来ました」


決めたこと。私がニューヨークに行く意味はない。


「...そうか、分かったよ。櫻田の決めた答えなら俺はそれを受け入れるよ」


そう言って笑う東野さんを見て、込み上げてくる切ない気持ち。

何やってんのよ。これくらいでこんな気持ちになっちゃって、どうするのよ。





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