君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「...そんなこと、あるわけないだろ?」


スッと私から視線を反らず東野さん。



「本当にですか?...もう、私には嘘つかないって言ったじゃないですか。...私は東野さんに幸せになって欲しいんです。もう、後悔なんてして欲しくない」


「菜々子...」


「東野さんが大好きです。好きすぎてどうしようもないくらい、大好きです。...だから私と別れてください」


これが私の出した答え。


「ちゃんと向き合って欲しいんです。私のこと、過去のこと関係なく自分の気持ちと向き合って下さい。...そうでないと、私も幸せになんてなれません」



「菜々子...俺はーー...」


「おかえりなさー...い」


勢いよくドアが開かれる。が、係員の女性は私達を見てどうしたらいいのか、困っている様子


「えっと...」


ヤバイ。


慌てて涙を拭い、立ち上がる。


「すみません、降ります」


「菜々子!」


降りて、まだ流れている涙を拭いながら歩いていると、後ろから腕を掴まれた。



後ろなんて振り返れないよ...。
もう、きっと私の顔酷いことになってる。
せっかく最後は笑顔で泣かずにさよならしたかったのに...。


「私、ずっと東野さんが好きです。...でも、東野さんと大貫さんが離れてしまっていた10年間には、私の気持ちは勝てないなって思いました。たった半分の5年間しか東野さんに恋してないから...。正直負けたって思いました」


再度涙を拭い、グッと堪える。そして後ろを振り返る。


「あと5年...。東野さんに片想いさせて下さい。同じ10年になった時、東野さんに会いに行かせて下さい」


掴まれていた腕の力が、どんどん弱まっていく。
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