君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
32歳になったら、東野さんに恋をして10年になる。



いい加減、いい歳をして片想いも、ね。


「特に意味はないけど。でもさすがに32歳以上はまずいかなぁって思ったの。...やっぱり私も結婚したいし」


「...あら、意外。菜々子にもちゃんと結婚願望があったのね」



「あるに決まってるじゃない」


こっちに戻ってきてから余計に強くなった。やっぱり両親を早く安心させたいし、孫の顔を見せてあげたいって思う。



「...でもね菜々子、結婚なんてタイミングよ?焦ってするものじゃないわ。無理して結婚したってうまくいかないんだから。...お母さんはそう思うよ」


「お母さん...」



「お母さんもお父さんも、まだまだ菜々子と一緒にいたいしね。...さて、もう寝ようかな。菜々子も明日早いんでしょ?」


「うん」


立ち上がり、ドアの方へと向かうお母さん。


「気を付けてね。...おやすみ」


そう言ってドアノブに手をかけた時、


「お母さんっ!」


思わずお母さんを呼び止めてしまった。


「どうしたの?難しい顔しちゃって」


「あー...。えっと...」


呼び止めたはいいけど、うまく言葉が出てこない。


「その...色々ありがと」


主旨がない言葉。


「菜々子...」

本当にありがとう。いつもいつも、感謝せずにはいられないよ。
大人になれば、なるほどにこの気持ちは大きくなる。


「子供が変に気を遣うことないわよ?...おやすみ」


そう話すお母さんは笑っていて、そのまま部屋を出ていった。


「...おやすみなさい」


気を遣ってなんてないよ。...私もいつかお母さんになった時、お母さんのようなお母さんになりたいな。


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ーーーー


「お~い菜々子!こっちこっち!」


「桜子!」


駅の改札を抜けるとすぐに私を呼ぶ声。一年ぶりに会う桜子だった。



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