君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「一年くらい前から付き合ってた人でさ。...同じ職場の後輩で、俺にはもったいないくらいに、いい人」
そう話す翔ちゃんを見て、本当に彼女のことを大切に想っているのが伝わってくる。
「菜々子に一番に報告したくてさ。まぁ、ちょっとタイミング悪いかもしれないけど」
「ありがとう。...でも、そっかぁ。翔ちゃん結婚するんだね...」
昔よく3人で誰が一番に結婚するかよく話していたけど...。
そっか。翔ちゃんが一番かぁ。
「今度菜々子や桜子にもちゃんと紹介するよ。...ありのままの俺を受け入れてくれる子だから、絶対菜々子とも気が合うと思うぜ?」
そう言って本当に幸せそうに笑う翔ちゃん。
「もう!翔ちゃんってば彼女にベタ惚れじゃない!」
「...まぁな」
照れる翔ちゃんを見てると、私まで幸せな気持ちになっちゃうよ。
「招待ありがとうね。勿論出席させてもらうね。...あっ!もしよかったら、余興とかみんなでやるから言ってよ?地元のみんなも呼ぶんでしょ?」
「あぁ。...じゃあその時はよろしく頼むよ」
「勿論!」
その時、12時を知らせる時計の鐘の音が鳴り響く。
「あっ...12時だ」
「...お誕生日おめでとう」
そう言って翔ちゃんは、私のマグカップに自分のマグカップをコツンと叩く。
「アハハ!コーヒーで乾杯?」
「別にいいだろ?おめでとうには、変わりないんだから」
私と翔ちゃんの声しか響かない部屋。どちらも話さないと、逆に静まり返ってしまう。
「...そういえばさ、明日の式は前の職場の人なんだろ?」
「うん、そうだよ」
「...じゃあ、さ。...来るの?」
「えっ?」
「...東野さん」
『東野さん』って言葉が出ただけで、いまだにドキッとしてしまう私は、本当に重い恋の病の重傷患者だと思う。
「...東野さんは来ないよ」
それに来るんだったら、私は出席出来なかったよ。