君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「そっか...」


会えるはずない。あんなことを言って別れてしまったんだから...。


「でっ、でもね、久し振りに職場のみんなと会えるから、楽しみなんだ!次の日まで休みとったから、二次会も三次会も行く予定だし!楽しんでくるよ」


「...あぁ」


あの別れから、東野さんとは口を利いていない。すぐにニューヨークに行ってしまったし、引き継ぎも終わった後だったし。

五年後に!なんて東野さんに言ってしまったけど...。
32歳になったら考えるってお母さんに言ってしまったけど...。
本当は怖い。
今はまだ微かな望みがあるから、そんなことを言っていられるけど、本当は東野さんの気持ちを聞いて、今度こそ本当のさよならをするのが、物凄く怖いよ...。

ーーーーーー

ーーー


「菜々子、寒いからもうここでいいよ」


「うん...分かった」


桜子はずっと眠ったままで、翔ちゃんは明日も仕事があるから帰宅。お見送りしようと、アパート下まで一緒に降りてきた。


「俺、明後日も仕事だから見送り出来なくてごめんな」


「そんな気にしないで。仕事なら仕方ないよ。...頑張ってね。これから益々余計に」


「あぁ。...菜々子もな?」


そう言って昔みたいに私の頭を乱暴に撫でる翔ちゃん。いつもだったらすぐに止まるのに、今日はなぜかずっと私の頭を撫でていた。


「ちょっと翔ちゃん!頭かなりヤバイ状況になってるんですけど!」


だけど、なぜか翔ちゃんは止めてくれなくて。いつもと様子が違う翔ちゃんにそれ以上何も言わず、されるがままだった。
それからしばらくして、翔ちゃんの手が私の頭から離れる。


「...菜々子の頭を撫でるのも、今日で最後だ」


「えっ...」


顔を上げると、なぜか翔ちゃんは悲しそうな表情。


「ここからは俺のわがままだ。聞き流してくれてもいい。...俺、菜々子には幸せになってもらいたい。誰よりも一番に」


「翔ちゃん...」


「何年経っても、どれだけ周りが変わっても、菜々子を大切に想う気持ちだけは変わらないから。だから、早く幸せになれ。...でないと、俺も安心して結婚できねぇよ」



...翔ちゃんは、本当にいつまで経っても変わらないね。


「アハハ!翔ちゃん、まるで私のお父さんみたいな台詞だよ?さっきの」


いつもいつも力になってくれて、励ましてくれて。何年たっても、離れていても変わらない翔ちゃんに、涙が出てくる。
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