君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「そんな大好きな橘さんが、大好きな藤原さんと今日という日を迎えられて、私も自分のことのように嬉しいです。...これからもずっとずっと幸せでいてね」
そう言って橘さんを見ると、橘さんは泣いていて。私まで泣きそうになってしまった。
どうにか涙を堪え、一礼して席へと戻ろうとした時、
「待って!櫻田さん!」
橘さんに呼び止められた。ドレスを掴み、私の方へと向かってくる橘さん。
「...橘さん?」
「皆様、先程素敵なスピーチを頂きました櫻田様は、なんと本日がお誕生日でございます」
えっ...?
拍手が巻き起こる会場内。目の前にやってきた橘さんにスタッフから手渡される小さな箱。
「新婦、亜希子さんより櫻田様へ誕生日プレゼントの贈呈です」
「嘘...」
予想もしていなかったことに、ただただ驚くばかり。
「櫻田さん、スピーチありがとう。嬉しかったわ」
そう言って差し出されたプレゼントをそっと受け取る。
「あなたが初めてだった。...こんなにも素直な自分でいられたのは。20代後半になってやっと本当の友達を持てたわ。これからもよろしくね」
「橘さん...」
あんなに頑張って堪えたのに、涙が溢れてきてしまった。
「...さっき、幸せでいてねって言ってたけど、今のままじゃ無理だわ」
「えっ...?」
「あなたも幸せになってくれないと、私も幸せになんてなれないわ。だから、あなたも絶対に幸せになって」
より一層拍手や歓声で騒がしくなる会場内。それに便乗するかのように、周囲には聞こえないよう橘さんが私の耳元で、そっと囁いた。
「...なんのために平日のあなたの誕生日に式を挙げたと思ってるの?...今度こそ絶対に幸せにならないと承知しないんだから」
「ちょっと橘さん、それってどういう意味ー...?」
「それでは皆様、もう一度大きな拍手をお願いします」
聞きたかったのに、私の声は会場内の拍手によってかき消されてしまった。