君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「向き合っても、分かり合っても、昔みたいにお互いの未来が繋がらなかったんだよ。...もう俺と奈津美の未来は重なる事はない」


それって...。東野さんの言葉に、自然と高鳴る胸の鼓動。


「もう忘れようと思った。沢山傷付けて泣かせて。何年も連絡しないで今更だって思われるだろうと思った。...でも、ダメなんだよ。いつも頭から離れなかったよ。あの時の菜々子の顔が」


東野さんがそっと私の左手をとる。


「諦めたくなかった。例え相手がいても、最悪結婚してたとしても。...あの時、ちゃんと前へ進ませてくれた菜々子に、自分の気持ちを伝えるまでは、これ以上俺は前に進めないと思った」


ポケットから取り出されたのは、あの指輪。


「離れても気持ちは変わらなかった。いや、増すばかりだった。菜々子が好きだ。...沢山傷つけてしまった分以上に幸せにしたい。...今度は俺が何年でも菜々子に片想いするから。...だから傍にいてくれないか?」


東野さん...。


嬉しくて嬉しくて、涙が止まらない。これは夢じゃないんだよね?ちゃんと現実だよね?

私が右手で握りしめていたケースを取ると、持っていた指輪をしまい、また私の左手に渡してくれた。


「ずっと傍にいさせて欲しい。俺は菜々子が傍にいないと、幸せになれない」


そんなの...。


「それは私です」


そっと東野さんに歩み寄り、胸に顔を埋める。


「私は...東野さんのことを忘れたことなんて、一度もありませんでした。忘れたくても忘れられなくて。私も東野さんが傍にいてくれないと、幸せになんてなれません」


「菜々子...」


懐かしいぬくもり。
忘れられなかったぬくもりに酔いしれる。


「...会いたかった」


さらに強く抱き締められて、涙が余計に溢れた。


このまま...。
このまま時間が止まって欲しい。ずっとずっと抱き締めていてもらいたい。


「...もう会えないかと思ってた」
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