君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
残りのお茶を一気に飲み干し、伝票片手に席を立つ。
「話を聞かせてくれてありがとう。ここは私が出すから」
「いいえっ!女性に出させるわけにはいきません!」
可愛い顔してるくせに、やっぱり男なんだな。小山君も。
慌てて席を立ち、伝票下さいと手を差し出す小山君を見て、つい口元が緩む。
「いいって。ここは出させて。その代わり!今度は高いフレンチランチ奢ってもらうからさ」
「えっ…?」
「私ってね、逆境に燃えるタイプなのよ。悪いけどみんなの思惑通りに辞めたりしないから」
「櫻田さん…」
そうよ。
最初はただ東野さんの秘書として、しっかり仕事したい。認めてもらいたいって思いしかなかった。
でも、みんなにあんな態度とられて、しかもその理由はとんだとばっちりで。
悪いけど私はそんな女じゃない。
確かにただ、東野さんに認められるような…
肩を並べられるような…
そんな女になりたくて、この五年間がむしゃらに仕事をしてきた
でもね、やっぱり仕事が好きだから頑張ってこられたんだよね。
そんな私の五年間をここで無駄にはしたくないもの。
「ほら!早く戻らないと休憩時間終わっちゃうわよ」
「あっ…はい!」
いまだに立ちすくんでいる小山君に声を掛けると、ハッとしたように慌ててこちらに駆け寄ってきた。
「おじさん、ご馳走様でした!」
「まいどあり!」
威勢のいいおじちゃんの声に送り出され、お店を出る。
「櫻田さん、ご馳走様でした」
「いえいえ。どういたしまして」
ぽかぽかと太陽の日差しが心地よく、小山君と二人並んで会社へと戻っていく。
「あの…怒らないで聞いてくれますか?」
「ん?」
突然足を止め、小山君はゆっくりと言葉を口にした。
「俺…櫻田さんってもっと女性らしい性格だと思ってました。だからきっと、すぐにリタイアしちゃうだろうなって…」
そう言うと小山君は急に深く頭を下げた。
「えぇ!?ちょっ、ちょっと小山君!?」
「すみませんでした!櫻田さんはそこらへんにいる女とは違います。なのに、そんな目で見てしまっていて」
「…小山君」
「なんつーか、人として恥ずかしくなりました。…人間は一人一人違うっすよね」
そう言いながら小山君は顔を上げ、笑顔を見せてくれた。
「これからもよろしくお願いしますね!」
そっと手を差し伸べる小山君。
「こちらこそ!」
私はその手を強く握った。
...ほら。ちゃんと分かってくれる人だっている。諦めたら何でもその瞬間終わりなのよ。
努力して頑張って...。信じていればきっと必ず道は開ける。願いは叶うって、私は信じたい。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
「いらねぇ。つーか邪魔」
櫻田菜々子。
営業部、部長の東野さんの秘書になりたての初日。
たった一人だけど、小山君に受け入れてもらえた嬉しさから、午後からも負けずにお茶を出してみたものの、また藤原係長からダメ出し。
右へ習えで皆『いらない』攻撃。
「あーっ!美味しい!!」
スマイル維持で給湯室へ駆け込み、お茶を一気に飲み干す。
挫けそうだけど、負けない!
ここで負けたら女じゃないわ!
東野部長の秘書として働ける日はいつになるやら…
前途多難な日々がこうして幕を開けた。
「話を聞かせてくれてありがとう。ここは私が出すから」
「いいえっ!女性に出させるわけにはいきません!」
可愛い顔してるくせに、やっぱり男なんだな。小山君も。
慌てて席を立ち、伝票下さいと手を差し出す小山君を見て、つい口元が緩む。
「いいって。ここは出させて。その代わり!今度は高いフレンチランチ奢ってもらうからさ」
「えっ…?」
「私ってね、逆境に燃えるタイプなのよ。悪いけどみんなの思惑通りに辞めたりしないから」
「櫻田さん…」
そうよ。
最初はただ東野さんの秘書として、しっかり仕事したい。認めてもらいたいって思いしかなかった。
でも、みんなにあんな態度とられて、しかもその理由はとんだとばっちりで。
悪いけど私はそんな女じゃない。
確かにただ、東野さんに認められるような…
肩を並べられるような…
そんな女になりたくて、この五年間がむしゃらに仕事をしてきた
でもね、やっぱり仕事が好きだから頑張ってこられたんだよね。
そんな私の五年間をここで無駄にはしたくないもの。
「ほら!早く戻らないと休憩時間終わっちゃうわよ」
「あっ…はい!」
いまだに立ちすくんでいる小山君に声を掛けると、ハッとしたように慌ててこちらに駆け寄ってきた。
「おじさん、ご馳走様でした!」
「まいどあり!」
威勢のいいおじちゃんの声に送り出され、お店を出る。
「櫻田さん、ご馳走様でした」
「いえいえ。どういたしまして」
ぽかぽかと太陽の日差しが心地よく、小山君と二人並んで会社へと戻っていく。
「あの…怒らないで聞いてくれますか?」
「ん?」
突然足を止め、小山君はゆっくりと言葉を口にした。
「俺…櫻田さんってもっと女性らしい性格だと思ってました。だからきっと、すぐにリタイアしちゃうだろうなって…」
そう言うと小山君は急に深く頭を下げた。
「えぇ!?ちょっ、ちょっと小山君!?」
「すみませんでした!櫻田さんはそこらへんにいる女とは違います。なのに、そんな目で見てしまっていて」
「…小山君」
「なんつーか、人として恥ずかしくなりました。…人間は一人一人違うっすよね」
そう言いながら小山君は顔を上げ、笑顔を見せてくれた。
「これからもよろしくお願いしますね!」
そっと手を差し伸べる小山君。
「こちらこそ!」
私はその手を強く握った。
...ほら。ちゃんと分かってくれる人だっている。諦めたら何でもその瞬間終わりなのよ。
努力して頑張って...。信じていればきっと必ず道は開ける。願いは叶うって、私は信じたい。
ーーーーーーーーー
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「いらねぇ。つーか邪魔」
櫻田菜々子。
営業部、部長の東野さんの秘書になりたての初日。
たった一人だけど、小山君に受け入れてもらえた嬉しさから、午後からも負けずにお茶を出してみたものの、また藤原係長からダメ出し。
右へ習えで皆『いらない』攻撃。
「あーっ!美味しい!!」
スマイル維持で給湯室へ駆け込み、お茶を一気に飲み干す。
挫けそうだけど、負けない!
ここで負けたら女じゃないわ!
東野部長の秘書として働ける日はいつになるやら…
前途多難な日々がこうして幕を開けた。