君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~

「櫻田」


聞き覚えのある声に、私の心臓は大きな音を立てて跳ね上がる。


「櫻田お前何をやってんだ?」


背後から聞こえてくる東野さんの声に、私は一歩も動くことが出来ず、そして振り返ることが出来ずにいた。

……前言撤回!東野さんに怒られるのは辛い!

…かといってあのオヤジに犯されるのもなぁ…

そんな考えを延々としてると、また聞こえてきた東野さんの怒鳴り声。


「俺はあそこから動くなって言ったよな!?なんで動いた!」


「……え?」


意外な東野さんの言葉に、思わず振り返ってしまった。

「え、じゃねぇだろ?あれほど言っただろ。俺が戻ってくるまで動くなって」


「…はぁ」


えっ?東野さんが怒っているのはそれが理由?


「あの、さっきのことに関してはお咎めなし…です、か?」


「さっきのこと?」


そっか。東野さんはさっきの私の失態を知らないんだ。
どうしよう…。この場合ってちゃんと東野さんに報告した方が良いのかな?


迷っていた時、私を追い掛けてきたのかまたさっきのオヤジが絡んできた。


「待ちやがれ!俺にこんな恥ずかしい思いさせて、のこのこと帰れると思ってるのか!」
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