君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
必要以上に(私の前では)話さない藤原係長が、珍しくコーヒー片手に言葉を続ける。


「風の噂で聞いたよ。あの三田社長に罵声を浴びせ、ボコボコになるまで殴ったらしいじゃないか」

「なっ…!」


なんだか話が膨れ上がってません?


「俺も正直、あの三田社長嫌いだったんだ。取引先だから言えなかったけどな」

「…はぁ」


もうなんて答えたらよいのやら…


「その噂、俺も聞きましたよ。うちの秘書がやったって聞いた時はスカッとしましたよ。あっ、コーヒーもらうよ」


「えっ…」


「俺も俺も!」


次々と営業部の方達が、トレーに乗せてある自分のカップに入ったコーヒーを取っていく。


私はただ、そんなみんなを唖然と見ているだけ。


「まっ!そんなわけだ。上層部の奴らに何か言われるだろうけど、俺達からしたら称賛に値するってわけだ。…東野もそう思ってるんじゃねぇの?」


「藤原係長…」


藤原係長からそんな言葉が聞けるなんて、夢みたいだ。


「櫻田なら、東野の女嫌い、直せるんじゃね?まぁ、頑張れよ」


「…へ?」


「ご馳走様」


飲み終わったマグカップをトレーに乗せる藤原係長。
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