2LDKの元!?カレ
「どうぞ、だいぶ散らかってますけど」
「おじゃまします」
私はパンプスを脱ぐと、揃えて隅に寄せた。
玄関から延びた廊下の両側に、キッチンとバストイレ、奥に部屋があるタイプの一般的な造りだ。
通された部屋は、散らかっているというより物で溢れていると言った方がしっくりとくる。
「……これ」
思わず目を惹かれたのは、壁に飾られた一枚の写真。
「ああ、これは鴇島肇の遺作です。志保子さんならご存知ですよね?」
「確か、グローバル・モードの編集長兼カメラマンだった人だよね」
グローバル・モードはうちの出版社から発刊されているモード誌だ。
パリやミラノのコレクションの特集を組ませたら、海外の有名モード誌にも引けを取らないと業界関係者からから称賛された。
その一時代を築いたのが、鴇島肇だった。
「確か彼は去年……」
「ええ、亡くなりました。オレの目標としている人だったのに、残念です」
ル・シエルからの帰り道、西野くんが今後モード誌の編集にかかわりたいと言っていたのを思い出す。