2LDKの元!?カレ
「……そっか、そうだったんだね」
確か、私の同期にも鴇島肇に憧れて編集者を目指したという人たちが何人もいた。
「……はい。鴇島さんは、たかがバイトのオレにも声をかけてくれる方でした。学生は学生らしくバイト辞めて勉強しろよ。そういいながらも、よく撮影に同行させてくれたり」
彼は、フォトグラファーとしても、編集者としてもそれなりに地位も名誉もある人だったけれど、それを鼻にかけることもせず、誰に対しても変わらぬ態度で接することのできる人だった。
そんな彼の才能に惚れ、人柄に惚れ、西野くんのような良い人材がたくさん集まってきていたのだと思う。
「オレ、鴇島さんの話したら止まらなくなるので。それに……」
西野くんはそういって口を噤んだ。
「それに?」
「泣きそうなんで……だから、この話はこれでおしまいにしましょう」
確かに、泣きそうな顔……それくらい西野くんにとって鴇島肇の存在は偉大だったってことなんだろう。
「……うん、分かった。じゃあ、ご飯作ろっかな」
私はそういって買い物袋から食材を取り出すと、早速調理の準備を始めた。