2LDKの元!?カレ

 店に着くと、暖簾をくぐって中へ入る。

お洒落な店内は照明が薄暗い感じに落とされていて、カフェやバーのような雰囲気だ。オフイス街とは異なる客層で、若い人の姿が目立っている。

私たちは席が空くのを待って、二人掛けの席に座った。

予定していたものを注文して、それを食べながらお酒をちびちびと飲む。

途中で甘いものが食べたくなって、抹茶のムースを注文した。

「これ、美味しいよ」

私はいつもの調子でスプーンに少しすくって聡の口元に差し出す。

「あ、ごめん。いらないよね。嫌いだもんね」
「いや、そんなにおいしいなら一口いただくよ」

聡さそういって、パクリと口に含む。

「うん、旨い。志保子が好きそうな甘さだな。ありがと」
「……うん」

ほろ酔い気分になった頃、最後の締めとして蕎麦を食べた。

「――ご馳走様でした。美味しかったね、大満足」

私は蕎麦湯を飲みながら、膨れたお腹を摩った。

「うん、旨かった。じゃあ、そろそろ帰るか」
「そうだね」
「ここはオレが」

聡はそういって当たり前のように伝票に手を伸ばす。

今までならそれでよかったのだが、いつまでも甘えているわけにはいかない。

「いいよ聡、割り勘にしよ。私結構飲み食いしたもん」
「いいから。黙って奢らせなさい」
「……でも」

結局支払いは聡がした。店を出てからお礼をいうと「どういたしまして」といいながら満足そうにほほ笑んでみせる。

「さあ、行こう。ほら、ちゃんと歩けよ志保子」
「……うん」

そして、足元のおぼつかない私の手を引くと、マンションへ向かって歩き出す。


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