2LDKの元!?カレ
交通量の多い国道246号線。そこを吹き抜ける重く湿った風は心なしか冷たくて、いつの間にか私の酔いを醒ましていった。
クリアになった思考は、繋がれた手をどうするのかと私に問いかける。けれど、その答えを出せぬまま、気付いたらマンションの目の前まで来ていた。
片手でポケットの中のカギを探る聡を見つめて、私はようやく、こう切り出してみる。
「……聡。手、もう大丈夫。ありがとう」
どちらともなく放された手。
おそらくもう二度とその温もりを感じることはないのだろうと思いながら、徐々に冷えていく指先をそっと自分の頬に押し当ててみた。
部屋に着くと私から先にシャワーを浴び、聡と交代する。
私は聡が出てくるのを待ちながら、リビングでノートPCを開いた。いつものようにメールをチェックして、それぞれに返信をしてから中途半端になっていたロケの進行表を作り始める。
「――志保子」
名前を呼ばれて顔を上げると、ペリエの瓶を二本手にした聡が立っていた。
「仕事してたんだ」
そういいながら一本を私の目の前に置くと、テーブルをはさんだ向かい側のラグの上に腰を下ろす。