2LDKの元!?カレ
丁度その時、和室の引き戸が開いて聡が顔をのぞかせた。
「おはよう、志保子」
ボタンが全留められていないワイシャツ姿の聡は、ネクタイとジャケットを腕にかけていて、履いているスーツのズボンには彼らしくセンタープレスがしっかりとかけられている。
彼の胸元がチラリと見えたとき、まるで条件反射のようにドキリとしてしまって、私は慌てて挨拶を返す。
「おはよう、聡。なんか私、昨日の夜仕事しながら寝ちゃったみたいで」
「起こしたんだけど起きなかったから、風邪でも引いたらまずいと思って部屋まで運んだ」
聡はそういってから、それでと言葉を続けた。その微妙な間に、嫌な予感がしたのだけど。
「志保子がオレのシャツの裾を放さないから。悪いと思ったけど、しばらく傍にいたんだ」
運んでもらっただけでも申し訳ないと思うのに、それ以上の迷惑をかけていたなんて。まともに聡の顔が見られない。
「ほんとごめんね……私、仕事行ってくるわ」
「ああ。気を付けて行って来いよ」
封筒とカバンを手に取ると、まるで逃げるようにマンションを出て駅へと向かう。
玄関を出る間際に、名前を呼ばれたような気がしたが、それは気付かないふりをした。