2LDKの元!?カレ

いつもよりも早めに編集部へ着いた。

「おはようございます」
「おはよう小松、丁度いいタイミング」

ドアを開けるや否や編集長は私を見つけて手招きする。

「はい、今行きます」

自分のデスクにカバンを置いてすぐ、早足で編集長の元へと向かった。

「これ、お願いね」

編集長は分厚いファイルを三冊、私に手渡すと営業部へ返却してきてほしいと言った。

「部長によろしく伝えて。定例の飲み会、そろそろ新しい店を開拓しましょうって。それと、次は私も行きますからってちゃんというのよ?」
「……はい、わかりました。伝えます」

営業部と良好な関係を保つことは売り上げを伸ばすためにも重要な要素でもある。

私も営業部にいたのでよくわかるのだが、かかわりのある編集部の出版物はつい気にかけてしまうもの。

編集長は、営業経験がないはずなのに、ずいぶんその辺の心理を理解しているものなのだなと感心してしまう。

 ファイルを抱えてエレベーターに乗り込むと、営業部のある二階で降りる。
近くにいた社員に声を掛けて、所定の位置にファイルを戻す。それから編集長の言付けを伝えに部長の姿を探した。

「戻りました」

結構時間がかかってしまった。私は足早に自分のデスクへと向かう。

するとその途中で、真田さんが私を呼び止めた。

< 191 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop