2LDKの元!?カレ

「チーフ、やっと戻ってきたんですね。これ、なんでしょう?」

見覚えのあるPCケース。真田さんはそれを胸の高さまで持ち上げると、意味ありげな笑みを浮かべる。

「ついさっき、受付から電話が来たんですよ。面会というか、届け物を持ってきた人がいるって。でもチーフは席を外されていたみたいなので、私が取りに行ってきました」

そう言われて初めて、自分のノートPCをリビングのテーブルに置き忘れてきたことに気付いた。

それが今ここにあって、よりによって真田さんが持っているなんて。届けたのは聡だ。彼女は聡に会ったのだ。その事実に、軽い眩暈を覚えた。

聡を責める気持ちにはなれない。だからせめて真田さんには、これ以上余計なことを口にして欲しくない。すぐそこにいる西野くんに聞こえてしまうから。

「そうだったんだ。わざわざありがとね」

私はお礼を言ってPCを受取ろうと手を差し出す。けれど真田さんは、PCを渡そうとはせず話を続ける。

「素敵な人ですね、彼氏さん。背が高くて、スーツが似合う大人の男って感じで。それに、忘れ物をわざわざ届けてくれるなんて優しいじゃないですか。愛されてますね、チーフ」
「真田さん、あのね。あの人は彼氏じゃないんだよ」

そう否定しても彼女は信じようとはしない。

「そんなはずないですよね、リビングのテーブルの上に置き忘れてあったって言ってましたよ。一緒に住んでるんですね、羨ましいです」

もしかしたら彼女には、聡が私の恋人かどうかなんて、どうでもいいことなのかもしれない。

ただ、この事実を西野くんに知らしめたいだけ。

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