2LDKの元!?カレ

「……これ、どうぞ」

いいたいことはこれで全てだろうか。真田さんは、ようやくPCを差し出す。

聡との関係性についてはきちんと否定しておきたかった。しかし今の彼女には、私の話を聞き入れる余地などなさそうだ。

「……あ、りがとう」

それを受け取ろうとした瞬間、「男いるくせに西野くんにもいい顔するなんて、マジで許せないんですけど」彼女はそうつぶやいて、いきなりパッと手を放した。

落ちる。

そう思ってとっさに手を伸ばしたけれど間に合わず、私の大切なPCはゴトリと音を立てて床の上に落下した。

「――……真田さん」

なんてことをしてくれたのだろうか。私は目を見開いて、声にならない叫び声を上げた。

「ああ、もう。ちゃんと受け取らないからですよ」

彼女は、まるで自分は何も悪くないとでも言うように私を見据え、くすくすと笑っている。

「パソコン大丈夫だといいですね、チーフ。早く拾ってくださいよ」

足元に落ちたPC。それを拾い上げたのは、他でもない西野くんだった。

「チーフ、今ちょっといいですか?」

そういうや否や西野くんはもう方の手で私の腕を掴むと、編集部の外に連れ出した。


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