2LDKの元!?カレ
ぐいぐいと私を引っ張って廊下の端まで来ると、西野くんは非常階段の扉を開ける。
先に私の体を押し出して、後ろ手でその扉を閉めた。
高い鉄策に囲まれた無機質な場所。灰色の空がやけに近く感じて、さらに上を飛んでいく飛行機の音がとても大きく聞こえる。
西野くんは上った息を整えながら、ゆっくりと掴んでいた手の力を緩めた。
「……パソコン、壊れてないといいですけど」
言いながら私にそれを手渡すと、大きなため息をつく。
それから訪れた沈黙。
何から話したらちゃんと伝わるのか。私は、それをずっと考えていたように思う。
「……オレが志保子さんちに行っちゃいけない理由って、そういうことだったんですか……男と、暮らしてるんですね?」
先に口を開いたのは西野くんだった。
「黙っててごめんね」
「ごめんねって……それじゃあ、パソコンを届けてくれた人って、志保子さんの彼氏」
そう言われて、私は慌てて否定する。
「ううん、それは違う。もう、彼氏じゃない。半年も前に別れたの」
「そうですか、それは信じたいです。でもじゃあ、どうして一緒に住んでるんですか?」
西野くんの疑問はもっともだと思った。
私だってそう思う。けれど、今までずるずるときてしまった。
「それはいろいろあって……でも、彼とは今、何の関係もないし、それにもうすぐあそこを出るつもりでいるから」
「そんなの、いやだ」
西野くんは語調を強めてそういうと、私の体を引き寄せて力いっぱい抱きしめた。