2LDKの元!?カレ
「――志保子」
声のする方に顔だけ向けると、ベッドサイドの椅子に座って心配そうに私を見つめる聡がいた。
「……聡、ここは」
どこだろう。そう思ったのは一瞬で、徐々にクリアになっていく思考は、自分の置かれている状況をハッキリと認識することができた。
「……病院」
「ああ。救急外来の処置室だ」
病院独特の消毒薬の匂い。カーテンで仕切られただけの空間。そこに置かれたベッドに私は点滴に繋がれて、横になっている。
耳をすませば大勢の人たちの話し声と、足音。それと、焦燥感を掻き立てられるような救急車のサイレンが引っ切り無しに聞こえてきた。
おそらく駅で意識を失った私を、誰かがここまで運んで来てくれたのだ。その誰かは、聡の他にあるはずもないのだけれど。
「……ずっとついていてくれたんだよね。ごめんね、迷惑かけて」
「何いってるんだよ、迷惑だなんて思うわけないだろう。あの時志保子が突然倒れて、その場に居合わせた親切な人がタクシーを呼んでくれた。それで近くの救急病院まで運んでもらったんだ」
「……そうだったんだ」
そう言われて記憶の糸を辿ってみたけれど、ハッキリと覚えているのは駅で聡と交わした会話の内容までで、それから先は何も覚えていなかった。
「気分はどう?」
「うん、大丈夫」
「志保子が余りにも目を覚まそうとしないから、このままだったらどうしようって」
聡は半分真面目な顔でそう言った。