2LDKの元!?カレ
ずるいと思った。でも、嬉しかった。けれど、私は首を横に振った。
「……そんなこといわないで。また、聡に甘えたくなるから」
「甘えればいいじゃないか。それでもオレは構わない」
「ううん。それじゃダメなの。私ね、大きなミスをしたの、仕事で。その時、彼を責めたの。彼との生活と仕事の両立が出来ないのは自分の責任なのに。もしかしたら、彼とももうだめかもしれないな」
言葉にして、西野くんとの未来が見えた気がした。
「だから私、自立した女になる。この年で何言ってるんだろって笑っちゃう。でも、それまでは、誰とも付き合ったりしちゃ駄目なんだと思うから」
自嘲気味に笑う。すると聡は私の頭をくしゃくしゃに撫でて、それからまっすぐにみつめた。
「じゃあ、待ってる。志保子が自立した女になるまで待ってるから。そうしたらまた、一緒に暮らそう」
「……聡」
「その間オレ、暫く日本を離れてアメリカへ行くよ」
「アメリカへ?」
「ああ。留学しないかと勧められていたんだ。これでやっと踏ん切りがついた」
丁度その時、カーテンの向こうから声が掛けられた。
「小松さん、入りますよ」
「あ、はい」
姿を現したのは、えんじ色のオペ着に白衣を羽織った小柄な女の人だった。