2LDKの元!?カレ



 翌朝、私は聡に起こされて目を覚ました。

「志保子、おはよう。一応起こしに来たけど、どうする?」
「……うん、今何時?」

目を閉じたまま、聡に問いかける。

「七時になる。仕事、休めるのなら休んだ方がいいぞ」
「ありがとう。でも、起きる」

ゆっくりと体を起こす。すると聡は私の肩に手を添えてくれた。

「ありがとう。大丈夫だから」
「そんな風には見えないけど」

聡は心配そうに私の顔を覗き込む。

「でも今日はどうしても休むわけにはいかないから」

ベッドから立ち上がると、おぼつかない足取りでリビングへと向かった。

すると後ろから聡が声をかける。

「志保子、朝飯作っておいた。少しでもいいから食べて行けよ」
「うん、ありがとう」

バスルームに向かい、顔を洗った。

「……酷い顔」

鏡に映ったその顔は、まるで人形のような土気色をしていた。

正直なところ、今は何も食べたいと思わない。でも、せっかく聡が作ってくれたのだから。

戻ってダイニングテーブルに座る。

「素麺ゆでてみたんだ。これなら食べられるだろう」

緩やかに立ち上る湯気を見ていたら、なぜか食べられるような気がしてきた。

「うん」

私は手を合わせると、箸を手に取った。

「いただきます」

だしの香る温かい素麺は、とても優しい味がした。


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