2LDKの元!?カレ
午後九時を過ぎた頃、西野くんは私の机の上にアパートのカギをのせた。
「今日からオレ、編集部に泊まります……だからアパートには帰りません」
「原因は私でしょ。だったら、私がここに泊まる。西野くんにそんなことさせられないよ」
「いいんです、オレがしたくてすることですから。しばらく頭を冷やす時間をください」
そう一方的に言うと、まるで私の言葉を受け付けないとでも言う様に、PCの画面に視線を移し作業を再開した。
その日から二週間後。ラグジュアリーナイトの撮影の日を迎えた。
二度の失敗は許されないと、関係者のスケジュール調整は完璧に行った。
「ラルゴの小松です。本日は、よろしくお願いします」
私は進行表通りに撮影が進むように裏方作業に徹した。
モデルへのお茶出しから、撮影の補助。息つく暇もない。
「西野くん。少しだけ、時間押してるからル・シエルへの連絡お願いね」
「はい、わかりました」
西野くんは、あの夜から本当に編集部に寝泊まりしている。
表向きは仕事のため。それを怪しむ人は誰もいない。
たまに着替えを取りにアパートへ戻ってはくるものの、私とは仕事以外で言葉を交わすことはなかった。