2LDKの元!?カレ
「落ち着きなさい。気持ちは分かるわ。でも、決めたの」
「そんな……もしかして、この間ミスをしたからですか?あんなミスもう、絶対にしません。だから、担当から外すなんてしないで下さい」
私は必死で頭を下げた。
「小松、私はあなたを外すなんて言ってないわ。真田のサポートとして関わって欲しいの」
「サポートですか」
「そうよ。あなたばかりが仕事をこなせても、編集部全体のレベルが上がらない。結局偏りが出て、自分の首がしまるのよ。これからは下の子たちをどんどん育てていく立場になってもらわないとね」
編集長はまるで私を諭すように言った。
「どんどん育てる……ですか。それは分かりますが、真田さんと組むのは私じゃなくてもいいじゃないですか」
それでも首を縦に振らない私に、編集長は口調を強める。
「編集長命令よ。真田には近いうちに私から話すから。そうしたら、引継ぎをよろしくね。あの子、社員になるために実績を作りたいそうなの。やる気があるっていいじゃない」
「……そんな」
編集長は立ち上がり私の肩を叩くと、会議室を出て行き、ひとり残された私は、椅子に腰を落として頭を抱えた。
熱意と勢いだけで仕事をしていれば評価される立場ではなくなったということだろう。
このまま編集者として生きていくためには、受け入れなければならないこともある。
はたして、私のそれができるのだろうか。
いや、やらなければならない。立ち止まっている時間はないのだから。
私は立ち上がると、会議室を飛び出した。