2LDKの元!?カレ
一週間後。上がってきたデザインに原稿を合わせたものを編集長のチェックが入った。
ゴーサインをもらったら、デザインデータ、写真素、テキストをまとめ、合番をつけて入稿する。
初稿のゲラが届いたら、それに校正をかける。
同時に取材元へ原稿を送り、掲載内容に間違いがないかなどの確認をしてもらう。
この作業を何度か繰り返し、ようやく校了を迎えた。
「お疲れ様でした、チーフ」
力尽きデスクに突っ伏した私に向かって、西野くんは労いの声をかけてくれる。
「お疲れ様。今回の企画は、西野くんがいてくれなかったら出来なかったと思うから、本当に感謝してる」
私はきちんと椅子に座りなおすと、丁寧に頭を下げた。
「……感謝だなんて、大げさですよ。オレは自分にできることをしただけですから……あの、オレに少しだけ時間を下さい。話したいことがあるので」
もしかしたら彼は、このタイミングをずっと待っていたのだろうか。私のために。
「……うん、いいよ。じゃあ、外に出ようか」
財布だけ持って編集部を出た。
隣のビルのコンビニでコーヒーを買うと、沿道にある植え込みの石の上に並んで腰を下ろした。
深夜の東京。
見上げた空には今日も小粒のダイヤモンドがわずかな光を放っている。
話があると言った西野くんは、なかなか話を切り出そうとはしない。
私はコーヒーを啜ると、気まずさを一緒に飲み込んだ。