2LDKの元!?カレ
再会の日まで
*
「そうか。志保子がフラれたのか。よしよし」
聡はそういうと、まるで子供をなだめるように私の頭をなでた。
「なあ、志保子。やっぱり一緒にこないか?」
聡の言葉に心が揺らがないはずはない。
けれど、今自分のままで、目標も夢も投げ捨ててついていくようなことは出来ない。
「……ううん、いかない」
「そうか。だろうとおもった」
「もう。分かってるなら、そんなこといわないでよ。はい、カギ」
差し出した聡の手の平にマスターキーをのせる。
家具のなくなったリビングはとても広くて、初めてこの部屋を見た時、ずっと欲しかったソファーが置けるとはしゃいだのを思い出した。
そのソファーは今、私が借りたワンルームマンションの大半を占めてしまっている。
不釣り合いな家具。
でも、処分することができなかった。
「そろそろ行かなきゃ」
私は床に置いたカバンを拾い上げる。
「志保子」
聡は私の腕を掴んだ。そしてまっすぐに私をみつめた。
「元気でな、志保子。またいつか、会おう」
「うん。聡も元気でね……じゃあ」
するりとほどけた聡の手。
私はさよならをいわずに、マンションを後にした。