2LDKの元!?カレ
西野くんが戻ってきたのだろうか。
そう思ってゆっくりと瞼を押し上げる。すると、カサリと目の前に白いレジ袋が置かれた。
「おはようございます」
さわやかな笑顔を向けられて、私は戸惑いながらもぎこちない笑顔を返す。
「お、おはよう」
「朝メシ、買ってきました」
西野くんはレジ袋からテイクアウトの牛丼を二つ取り出すと、机の上に並べる。
会社のはす向かいにある二十四時間営業のこの店の牛丼は、ラルゴ編集部での徹夜明け定番朝食となっているのだ。
「さ、冷めないうちにどうぞ」
「え、あ……うん」
はい、と差し出された割り箸を反射的に受け取る。
西野くんは付属の温泉卵を真ん中に割りいれると、両手を合わせてから豪快に頬張った。
何事もなかったかのように振舞う彼を見ていると、昨夜の出来事はすべて夢だったのではないか。などという都合のいい展開を期待してしまうのだったが。
「たべないんですか?」
「ううん、食べるけど……」
「けど、なんですか?ああ、大丈夫ですよ。泣いていた理由なんて聞きませんから」
固まる私をよそに、ニコリとほほ笑んで「でも」と言葉を続ける。
「オレの告白に対するあなたの気持ちは聞かせてもらいますから。近いうちに必ず」