2LDKの元!?カレ
食べちゃえばいいのに
◇
「それで、志保子。ついに食べちゃったんだ。西野のこと」
正午。ランチタイムで賑わうオープンエアーのカフェで、同僚の丹羽みちる(にわみちる)は、プレートに乗せられた温野菜のアスパラガスを意味ありげにフォークでつついた。
「ち、ちょっと。そうじゃないって」
みちるの言葉に、私は飲んでいたアイスティーを吹き出しそうになる。
「まだ最後まで話し終わってないの」
紙ナプキンで口元を押さえると、改めて話を続けた。
「ふーんそう。結局朝まで一緒にいたなら、食べちゃえばよかったのに」
聞き終えるとみちるは、ニヤリと笑って、さっきまで弄んでいたそれを一気にフォークで突き刺して口に運んだ。
赤いグロスが塗られたふくよかな唇がゆっくりと動く様は、同性の私が見ても思わずドキリとしてしまうほど色っぽい。
みちるは私と同い年の契約社員だ。
もともと編集プロダクションンに所属していた彼女は、私より半年程遅くラルゴの編集部にやって来た。
私とはまるで正反対の性格だけれど、なぜか気が合って、公私ともに仲良よくさせてもらっている。