2LDKの元!?カレ

また来たんですか。懲りない人ですね。

彼の目がそういっている。

このところ、西野くんと交代でほぼ毎日ここに足を運び、未だ接触できずにいる鏑木圭の出待ちをしている。

私だって、こんな面倒なことはしたくない。

けれど、取材交渉の電話は一切取り次いでもらえず、店当てに送ったメールの返事には、当たり障りのないお断りの文言が並んでいた。

もちろん店の予約も取ってはいるが、二カ月先にしか空きがなかった。

もう、時間がないというのに……本当にどうしたら、いいのだろうか。

思い余って空を仰ぐと、ポツリと雨粒が落ちてきて、乾いたアスファルトを斑模様に染めていった。

生憎傘は持っていない。

けれど、幸なことにノートPCは机の上に置いてきた。

だからもう、濡れてもいいや。

そう覚悟を決めた時、私の頭上にスッと傘が差しだされた。


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