2LDKの元!?カレ
私は安堵のため息をつくと、貸してもらった傘を傘立てに入れ、玄関のドアにカギをかけた。
それから浮腫んできつくなったパンプスを脱いで、ゆっくりとリビングへと向かう。
できることなら、聡とは顔を合わせたくはないのだけれど……、どうやら、その願いは叶いそうもない。
「志保子、おかえり」
私の思いとは裏腹に、聡はいつもと変わらないやさしい笑顔で迎えてくれた。
仕事で疲れた時、いやなことがあった時、この笑顔に癒されたくて、家路を急いだ日々が懐かしい。
もう、自分のものではなくなってしまった。そう思うと急に惜しくなるなんて、自分はなんて欲張りな女なんだと思う。
「……ただいま。これ、聡宛の郵便」
だから、それだけいって封書を手渡すと、逃げるように自分の部屋に入ろうとした。なのに、聡は私を呼び止める。